[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 揺り籠

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : ゆらり、くらり

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 朧げな心、記憶

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : そんなものは、手放して

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 新しく、産まれなおしましょう

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : ああ、可愛いあの子…

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 揺らめく満月の元、琥珀の卵が震えた

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 半神の仔よ、目覚めなきまま

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 今はただ、遅れながらにも

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 導くように

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 己が母身を、祝福に飛ばす

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : その目で感じるのは、叡智

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 故にそれは律

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : この世界に欠けたもの、そして

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : この月を満ちさせ得る物なのだから

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] : 街中、異例のスーパームーンが浮かぶ

[メイン3] : そして、光の柱が伸びる

[メイン3] : 全ては不完全なる愛し仔であり

[メイン3] : 決して果たされぬ生れ変わり

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 「怖がらないで」
優しく呟く、月の女王は

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 「…大丈夫、素晴らしく」
瞳を閉じて、黄金の羊水の中呟く

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 「産みなおして、あげますから」

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 未だ満ちぬ満月、しかし

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 確かに、この街の中

[メイン3] 満月の女王 ゆかり : 叡智を求めて、いるのだろうか?

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] 満月の女王 ゆかり :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : ・・・・・どういうことだ?
このワタクシはプラズマ団をつくりあげた完全な男なんだぞ!
世界を変える完全な支配者だぞッ!?

[メイン3] ゲーチス : ───ただ一人の少年に、そしてただ一人の反抗期に
烏合の衆に…………目論見を瓦解させられ、早何カ月が過ぎた事だろう。

[メイン3] ゲーチス : 理想を、真実を、ただワタクシが世界を掌握し支配者となる為
追求してきたが、最後の最後でワタクシに理想も、真実も、歯向かってきた。

[メイン3] ゲーチス : 今、ワタクシの心は
この更けゆく夜闇に染みのように棚引く暗雲。
青空であれば、その青を掻っ捌いたかのように溢れ出る入道雲のような綿。

[メイン3] ゲーチス : 「ノーてんき」でいられるはずがないのです。

[メイン3] ゲーチス : だが───もう、これも今宵で終いなのです。
今、正にワタクシの世界は澄み切る直前なのです。

今宵は『スーパームーン』
───その規模の雄大を誇る月は、見掛け倒しと感じさせるほどの朧な光をワタクシへと、まるでどこかへと導くように浴びせ続ける。

[メイン3] ゲーチス :
 あらゆる 叡智の 結晶。

[メイン3] ゲーチス : まるで それを握るのが ワタクシであれ
そういわんばかりに 月光は ワタクシを導いているのです!

[メイン3] ゲーチス : 「───フハハハ!」

[メイン3] ゲーチス : 夜闇に溶けゆく 笑い声

[メイン3] ゲーチス : 今 一度

[メイン3] ゲーチス : 再び この野望を果たし

[メイン3] ゲーチス : いとも たやすく

[メイン3] ゲーチス : 『ワタクシの望む世界』を───実現するのです

[メイン3] ゲーチス : その男の口角は 綺麗な三日月を描く事はできず
どこか 欠けていた

[メイン3] サザンドラ : ───…………

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン : 獣王、などという称号を貰ってからどれ程経っただろうか。

[メイン3] クロコダイン : そう思えるほどの長い月日を経て、世界を知ってみれば、肩書きなど拘る程の物でない事を痛感する。

[メイン3] クロコダイン : このような称号を貰っても、オレの強さなどたかが知れている。上を見ればキリがない。

[メイン3] クロコダイン : そうだ。オレの強さの礎を築くのは、たった一つ、純粋な腕力のみ。
そして他に手を出せるほどの器用さなど、ハナから持ち歩いていないのだ。

[メイン3] クロコダイン : かと言って、オレには強さ(これ)しかない。他の生き方も知らん。

[メイン3] クロコダイン : だから今はただ、限界を尽くしてひたすら自分を追い求めるのみ。

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン : ……叡知を得る物体など、オレにとってはどうでもいい。使いこなせるわけもないしな。

[メイン3] クロコダイン : だがそれを求めて、奪い合う覚悟で来る者とぶつかり合えるのならオレは、

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン : オレは

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] クロコダイン :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 「……フン」
鼻を鳴らし、少女は街にと降り立つ

[メイン3] キャロル : 移動手段はタクシー
かなりの時間を有した為、かなりの金銭を必要とすると考えていたが

[メイン3] キャロル : 何度もいらぬお節介を受けた為かなり減らしてもらった
…恐らくは見た目で判断されたのだろう
実年齢はかなりあるはずなのだが

[メイン3] キャロル : まあ、そう言うわけで色々あって、街を散策しているわけだが

[メイン3] キャロル : ……?
全体的に空気が張り付いているな

[メイン3] キャロル : 長年の勘
つまり、異常に長く触れた事があるが故の察知なのだが

[メイン3] キャロル : ……本当にこんなところにあるのか?

[メイン3] キャロル : ──────このままだとタクシーの経験しかないのだが

[メイン3] キャロル : 近くから、奇異な視線を感じる
それは、"少女"に対するそれとはまた違った気がして

[メイン3] ゲーチス : 「おや どうやら貴女も気づかれたようで」

[メイン3] ゲーチス : 風に靡くその妖しげな装束は、この町並みと
規模の雄大なスーパームーンの下でかろうじて溶け込んでおり。

[メイン3] ゲーチス : ───その目、その顔、その気の巡らせる微かなたゆり。

[メイン3] ゲーチス : この男は ただそれだけで彼女も『叡智』を求めている事を悟った。

[メイン3] キャロル : ……この男、何者だ?

[メイン3] キャロル : 金髪の少女
それこそ、見た目からすると小学生やそこらと言った少女が醸し出す年相応の雰囲気は一切なく

[メイン3] キャロル : 変わりにあるのは疑念や疑心など

[メイン3] ゲーチス : 「この空気は 叡智を求める者でなければ
 勘づけないもの ですからね ……ふっふっふっ……」

[メイン3] ゲーチス : 「そうでしょう?」

[メイン3] キャロル : その通り
自分もまた、それを手にしようとする存在

[メイン3] キャロル : 自身の欠けた体験を取り戻す為の─…

[メイン3] キャロル : 「…そうだが、何か用か?」

[メイン3] キャロル : 大凡少女とは思えない口調
これもまた、記憶にしかない誰かの模倣だ

[メイン3] ゲーチス : 傲岸不遜 妙に 古めかしささえ感じる
表面上は それだけでも只者ではないと
常人は察する事だろうが ワタクシはそれより前に 察していた
でなければ…… この『戦い』を乗り切れませんからね

[メイン3] ゲーチス : 「貴女は きっと賢い
 だからこそこの空気を感じ取った瞬間に…… ワタクシの視線にも気づいた」

[メイン3] ゲーチス : 「だからこそ わかるはずです
 一人で切り抜けられるほど ヤワな展開は想像できない と」

[メイン3] キャロル : 賢いと言って、知識だけなのだが…

[メイン3] キャロル : 沈黙。
それは無言での消極的肯定を指していた

[メイン3] キャロル : まだ完全にこの街の猛者については知らないが、少なくとも1人で切り抜けられると思えるほど自信家でも無い

[メイン3] ゲーチス : 「フフフ…… ワタクシもこの戦いを一人では
 切り抜けられないと 判断しまして…… それに……
 あらゆる叡智の結晶を たった一人で独占するのも いかがなものかと
 思いましてね───…………」

[メイン3] ゲーチス : 「ですが このままではロクでもない輩に……
 叡智を総取りされてしまう そうなる前に……どうでしょう」

[メイン3] ゲーチス : 「正しく使えるであろう ワタクシたちで
 その叡智を手にする為に まず 手を取り合うというのは」

[メイン3] キャロル : ………悪く無い提案だ
少なくとも脳はそう考える

[メイン3] ゲーチス : 本当は 彼こそが『総取り』を目論むその張本人
だが腹の底は見せない 仮にこれで見えてしまうような相手なら

───今 消すべきだとも判断できる。

[メイン3] キャロル : 何より今のオレは智慧しかない愚者
経験からの判断はどうしても行えない

[メイン3] キャロル : ───ならば

[メイン3] キャロル : 「………いいだろう、それの実態がどうかの調査も兼ねて…共同戦線を張るのも悪くはない」

[メイン3] キャロル : 嘗ての誰かは、1人でやろうとはしなかった
少なくとも部下や……そんなものを頼っていたから

[メイン3] ゲーチス : 「やはり 貴女は賢明な道の見える方のようで
 …… ワタクシは毛ほども思ってはいませんでしたが
 もし そう判断を出せる相手でなければ……」

[メイン3] ゲーチス : 周囲の人々を見る

[メイン3] ゲーチス : 「きっと ここは火の海になっていることでしょう
 尤も ワタクシが そうはさせませんがね」

[メイン3] ゲーチス : 本当は 今すぐにでも火の海にしてやっても いい
ですが この娘は今 ワタクシの掌に乗った

[メイン3] キャロル : 『力は適切な時に使え』
とは、誰の言葉だったか…

[メイン3] キャロル : ……そこは、思い出せないが

[メイン3] キャロル : 多分、今はここを火の海に変えるなんてことはやってはならないのだろう

[メイン3] ゲーチス : さて 手の内を見せて安心を買いますか?

いえ…… 今ではありませんね 脅しだと捉えられかねない
時期尚早

[メイン3] ゲーチス : 「では…… 共に参りましょう
 おっと 自己紹介がまだでしたね
 ワタクシはゲーチス プラズマ団のゲーチス」

[メイン3] ゲーチス : この名を知っているなら ここも分岐点
ですが おそらくこの場所にまではワタクシと その組織の名は轟いてはいまい

[メイン3] ゲーチス : 轟いているのなら 今すぐにでも

[メイン3] キャロル : その読み通り

[メイン3] キャロル : この世界の基準からするならば
産まれたばかりの赤ん坊に過ぎないであろう彼女には

[メイン3] キャロル : その名を知る由もない

[メイン3] キャロル : ただ、一つだけ思う節を言うのであれば
嘗ての誰かはこんな時…どうしていたのだろうかと言うことくらいか

[メイン3] ゲーチス : 瞬きを挟み 男はその一瞬で
『確認』を終えると

[メイン3] ゲーチス : 「───では 貴女の名前も知っておかなければ
 無作法というもの ここで会ったのも何かの縁です」

[メイン3] キャロル : 「……キャロル」

[メイン3] キャロル : 「キャロル・マールス・ディーンハイム」

[メイン3] ゲーチス : 『祝歌』
『戦と農耕の神』
『ディーン(10人を治める)』

───『ハイム』……
『ハイム』……どこかで聞き覚えのある響きですが
まあいいでしょう

[メイン3] キャロル : 異端たる西欧の錬金術師
その名を告げる

[メイン3] ゲーチス : 「では キャロルさん
 ワタクシと共に この手に叡智を握り
 人々を導く運命があらんことを」

[メイン3] キャロル : 「……ああ、そうだな」

[メイン3] キャロル : 単純な赤子である少女は、呆気なく眼前の男の思惑通りに従う

[メイン3] キャロル : 嘗て、彼がそうしたある"不思議な力を持つ少年"のように、少女もまた…

[メイン3] キャロル : そこに祝歌も戦と豊穣を司る名来も無く、今はただ

[メイン3] キャロル : 人形のように…

[メイン3] キャロル : 何故、彼がそれを追い求めるなんて事は知ったことじゃない
自分もまた、それを明かすつもりもないのだから
聞かれない限りは

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : ───フ

[メイン3] ゲーチス : フハハハハハ……
笑みを作るのが苦手なのが 救いです
これほどまで いともたやすく呑んでくれるとは……が

[メイン3] ゲーチス : 油断ならない
その幼い肢体にどれほどの力がある?

[メイン3] ゲーチス : それを今のワタクシが 知る由もない
が 逆にこの娘も ワタクシの事を知らない
どちらも手の内は見せていない

[メイン3] ゲーチス : だからこそ おそらくは互いに警戒し合う

だが これでいいのです
いつでも切り捨てられるようにするには これぐらいの距離間が心地よい

[メイン3] ゲーチス : 『奇跡』なんてものを ワタクシは信じない
だから なおさらこんな娘との間に絆だの ありふれた造語を 結ぶ事もない

[メイン3] ゲーチス : 必要なのは『理想』と『真実』
ただ それだけ
『支配』の為に

[メイン3] キャロル : 『奇跡』を オレは信じている
想い出の中の誰かが それを成し遂げたのだから

[メイン3] キャロル : オレが必要なのは『理解』と『体験』
このオレの
『再構築』の為に

[メイン3] キャロル : 故に 今はまだ警戒をし続けよう
いつかきっと 『理解』が起きると思いて

[メイン3] キャロル : 「とは言え、どこに行くのかアテも無くふらつくものでもないのだろう?」
と、話しかける

[メイン3] ゲーチス : 「ええ ですが……
 叡智の結晶とやらが どこにあるかは
 この町のどこかに存在する事以外は 全く見当がつきません」

[メイン3] ゲーチス : 「しかし 逆に考えれば
 それは叡智の総取りを考える方も 同じであろうという事
 …………急ぐことはありません 叡智は正しきものの手に渡る運命なのです」

[メイン3] ゲーチス : 今の世界を 破壊すれば
正義は ワタクシですから ね

[メイン3] キャロル : 「……そうだな、正しきものの手に渡れば…道具はきっと正しい使われ方をする」

[メイン3] キャロル : 力も 道具も
そこはかわらない

[メイン3] キャロル : 「フン……なら座して待とうと?」

[メイン3] ゲーチス : 「しかし 現地の人たちに 素直に叡智の場所を尋ねたとして
 おそらく首を傾げられるどころか
 ワタクシの存在を 他のハンター共に
 ───知らしめる事になってしまいますからね」

[メイン3] ゲーチス : 「が…… それは
 他のハンター共に奇襲をかけられないようにする保険です」

[メイン3] ゲーチス : 「むしろ ワタクシたちが知らない情報を持っている可能性のあるハンターを
 野放しにするというのは あらゆる意味で デメリット」

[メイン3] ゲーチス : 「ですので……アナタとワタクシの勘を合わせて
 他のハンター共を見つけ出し…… 奇襲さえかけられなければいいのです」

[メイン3] ゲーチス : 「こちらが奇襲をかけるにしても 良いでしょう
 あるいは堂々と 前に出て……まずは話を切り出して
 交渉が決裂するか しないか 情報を持っているか見定めればいいのです」

[メイン3] ゲーチス : それに 最悪の事態に陥っても
こちらには武器であり盾がある
ワタクシの───サザンドラ そして……この娘

[メイン3] ゲーチス : 切り捨てればいいのです

[メイン3] キャロル : 「……」

[メイン3] キャロル : 「初見の対応から思っていたが…やはり頭が回るな」

[メイン3] キャロル : そう、戦を支配するのは常に情報

[メイン3] キャロル : これまた誰かの記憶からの掘り出し物だが

[メイン3] キャロル : それらを握る事によるアドバンテージ、そして万が一の保険とやらは非常に役に立つ

[メイン3] キャロル : 「───ならば問うが」

[メイン3] キャロル : 「このままここに佇むか、陣地を見つけるか…遊撃が如く街を駆けるか」

[メイン3] キャロル : 「そのどれが、最も確実な"チェック"に近づけると思う?」

[メイン3] キャロル : これに応えられない程度では その程度
『理解』を捨て 『分解』に移ればいい

[メイン3] ゲーチス : 「フフフ…… 間違いないのは佇むのはベストではないということでしょう
 陣地を見つけるにしても 街を駆けるにしても
 それは間違いなく叡智へと近づく小さな一歩となることでしょう」

[メイン3] ゲーチス : 「思わぬ収穫もあるかもしれません
 ───しいて言うなら 陣地……つまり待ちの体勢をいつでもとれる場所
 その確保」

[メイン3] ゲーチス : 「奇襲をかけられれば ワタクシはひとたまりもありません
 貴女は切り抜けられそうですが ね
 ですから……いったんは『待ち』の体勢を作れるようにしましょう」

[メイン3] ゲーチス : 「佇んでいては それは『待ち』ではなく
 ただのカカシ ですから」

[メイン3] キャロル : 「…ク…クハハハハハ!!いいぞ!思った以上の答えだ!」

[メイン3] キャロル : 「そうしようではないか、悪くない」

[メイン3] キャロル : 三日月のように口角を上げて

[メイン3] キャロル : とある錬金術師の記憶を頼りに少女は笑う

[メイン3] キャロル : 「しかしまあ、オレはまだこの街に来て直ぐだ…そして脚も無い…故に確保する場所の見当は付いている…か、探してもらおうか」

[メイン3] キャロル : 今の発言で理解した
少なくとも、"コイツ自身"に戦闘になった時切り抜けられる力は無い

[メイン3] キャロル : なら何故このような提案に乗っているのかはわからないが…ただ何かあることだけは確かだろう

[メイン3] キャロル : なのでまあ───此方の脚がない事くらいは開示してやってもいいのだろうな

[メイン3] ゲーチス : ほお そこまでワタクシの口車に乗ってくれますか
いいでしょう この娘も相当な気概がある
少々 見直しましたよ やはり……賢明

[メイン3] ゲーチス : ───もしかしたら

フハハハ…… もし予感が当たっていれば
この娘を 新たな"王"に仕立て上げるのもまた…………選択の内

[メイン3] キャロル : ……オレもわからないが、誰の記憶のものなのかもわからないし、知識にもないが

[メイン3] キャロル : こう言う人の事を…何と言うのだったか…

[メイン3] キャロル : それを答えるものは、少なくともこの場にはいないだろう
彼女の預かり知らぬことでは無いが

[メイン3] キャロル : いいだろう 今はまだ理解の段階だ

[メイン3] キャロル : 「行くか」

[メイン3] ゲーチス : 「ええ 行きましょう
 キャロル さん」

[メイン3] ゲーチス : 瞬きを挟み 歩を運び始める

[メイン3] ゲーチス : だが瞬きをいくら挟もうが
決して閉じる事のない 装束に刻まれた凝視の意匠が
妖しげにキャロルを見つめていた

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] キャロル : そのまま、少女も歩み続ける

[メイン3] キャロル : 金髪を風に靡かせて
腹の探り合いをしつつも

[メイン3] キャロル : どこか

[メイン3] キャロル : 記憶の中にある少女の通りに
力以外で理解する事が あればいいなと

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3]   : こうして
『奇跡の殺戮者』と『理想と真実の支配者』が
戦場へと───────

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3]   :  

[メイン3] ゲーチス : ───人目のあまり付かない
だが 『待ち』をするには最適の陣地を高所から見下ろすように探す

[メイン3] ゲーチス : キャロルという娘とは 一度二手に分かれた
その方が効率が良いというものです
同時に……彼女がいざという時に一人でやっていけるかどうか 試す

[メイン3] ゲーチス : それに あまり同行を続けても
こちらがボロを出す可能性はあまりにも高い
この空白は いざという時にそのボロを正当化できる言い訳も
捏ねて作れるというもの

[メイン3] ゲーチス : 陣地も探せて 一石二鳥といったところです

[メイン3] ゲーチス : 「……おや」

[メイン3] ゲーチス : 閑散としてきて いまにもモクローが鳴きそうな町の中で
不自然な存在を 目撃する

[メイン3] ゼシルウェンシー : 脚を引き摺り、腕は垂れ下がりながら移動する影

[メイン3] ゼシルウェンシー : 満身創痍と言った体
まるで激しい戦いでもあったような

[メイン3] ゼシルウェンシー : それこそ……”叡智”でも巡るような

[メイン3] ゲーチス : 「───これはこれは……
 ワタクシが万が一ボロを出した時の……言い訳になりそうなこじつけを一つ
 思いつきました そして同時に……邪魔者も排除できる」

[メイン3] ゲーチス : すっ と高所から見下ろしながら
ゲーチスがおもむろに取り出したのは
赤と白の球体。その中には何かが息吹をあげていた。

[メイン3] ゲーチス : 「いきなさい
         ポケモン
 ───ワタクシの『道具』

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] サザンドラ : 球体が開かれれば
そこから赤い光が輪郭を成し
三つ首のドラゴンが姿を現せば

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ :
急降下

[メイン3] ゲーチス : 「サザンドラ ───ドラゴンダイブ」

[メイン3] ゲーチス : 移動する影へとサザンドラを急接近させ───

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「───っぶ、ねえぇええぇえ!!!」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 強く跳ね
空中で回転しながら横へと身を翻す

[メイン3] サザンドラ : 「!!」
六枚の翼を広げ 翻された瞬間に距離を取る

[メイン3] ゲーチス : 「───! 躱された……」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「んだ、お前…………」

[メイン3] ゲーチス : あの動き……常人ではない

[メイン3] ゲーチス : いや 人 なのか?

[メイン3] ゼシルウェンシー : ざざ、と地面を引きずりながら着地

[メイン3] ゼシルウェンシー : 改めてその姿を見れば三つ首の竜
こんなの何処に潜んでいたのか
少なくともこんな気配はずっと感じなかった

[メイン3] サザンドラ : サザンドラの『ドラゴンダイブ』の余波からか
躱され 地面にも激突していないにも関わらず
周囲の建物に亀裂が入る

[メイン3] サザンドラ : 「………」
やつれた姿 ただその瞳は相手を捉える事しか知らない

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「…………ふうん」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 目を見て
これは……なるほど

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「お前もどっかの誰かの鉄砲玉ってわけだ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 気が合いますねえ と軽く笑う
言葉が通じるかは知らないが

[メイン3] サザンドラ : 次の瞬間
赤い いや深紅の瞳を禍々しく光らせ
虚空に紅を引きながら───

[メイン3] ゲーチス : サザンドラ ───かみくだけ

[メイン3] サザンドラ : 一瞬 引き裂かれたようにも錯覚するほどに口を広げ
血の滲んだ牙を見せつければ 虚空もろとも敵を噛み砕こうとッ

[メイン3] ゼシルウェンシー : 次から次へ絶え間ない攻め……慣れてるな

[メイン3] ゼシルウェンシー : わざと腕を、差し出す。

[メイン3] ゼシルウェンシー : 極”悪”な一撃に違いねえけど

[メイン3] ゼシルウェンシー :
                    等倍
”悪”どさなら負けねえ自身があります──まともに喰らうとは思わないことです
 

[メイン3] ゲーチス : ───!!? 何……
腕を なぜ!? いや これは罠……?
いやもっと別の? "気味の悪さ"まで感じる!
サザンドラ───いや これは止まらない!

[メイン3] ゼシルウェンシー : なんせ、そっちの首は3つかもしれねえけど

[メイン3] ゼシルウェンシー : こっちの体は”無限”の勝利!

[メイン3] ゼシルウェンシー : 腕一本、安い安い!!

[メイン3] サザンドラ : ───咬合
サザンドラは命令通り 噛み砕く───

[メイン3] ゲーチス : まずい 勢いが余っている!
引け! 距離を取るのです サザンドラ!

[メイン3] ゲーチス : ───いや これも 間に合わ……

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「お前もどっかの『道具』なんだろ?」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 腕を嚙み砕いた頭
虚ろな目が間近にある

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「だったらよ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「もっと楽しそうにしとけよ」

[メイン3] サザンドラ : 「!?」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「使われろ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「自分の役目を楽しめ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「それが一番、無駄がない」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「それが出来ねえなら」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「”無駄”がある」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「それなら、そんなの無い俺に」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 戦い以外ない俺に!!

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「お前は 勝てない!!!」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 噛まれてない腕でナイフを素早く抜き

[メイン3] ゼシルウェンシー : 一閃

[メイン3] サザンドラ : 目を見開いたと同時

───その一閃が中央 つまりサザンドラの中枢となる頭部
その右目に奔る

[メイン3] サザンドラ : 瞬間 サザンドラは───絶叫
それと同時に 周囲の建物を 石畳を
無差別に破壊し始める

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「ヒヒッ」

[メイン3] ゲーチス : ───何だ 滅茶苦茶だ
腕を捨てる? サザンドラに一太刀入れたようですが……
その為だけに? なんだ この臭いは……

まるで 勝つ事しか考えていないのか!
趣味の悪い 気持ちが悪い……!

[メイン3] ゼシルウェンシー : もう動かせない腕を脱力させたまま、後ろへ向けて跳ぶ

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「あまり痛がるなよ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「道具にそんなの要らねえ」

[メイン3] ゲーチス : ッ……───サザンドラ
あなたは『道具』です ワタクシの
痛がっている暇は無いのです
この騒ぎが 余計な諍いを起こしかねません

[メイン3] ゲーチス : わかってますね───

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「どうせなら俺みたいな、”心の無い化け物”になってよォ~」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「楽しもうぜ 戦いをさあ!!」

[メイン3] サザンドラ : 「グルルルルッッッ……!!!!」
ギリギリと 歯ぎしりで痛みを 憔悴を 焦燥を 抑え
次の瞬間 サザンドラの輪郭 シルエットをなぞるように禍々しい
何かが湧き出始める

[メイン3] ゲーチス : フフフ……
そうです ヤツが勝つ事だけを考えるのなら
こちらもまた同じようにすれば いいだけのこと

[メイン3] ゼシルウェンシー : 雰囲気が 変わった

[メイン3] ゼシルウェンシー : 来る か……!

[メイン3] ゲーチス : サザンドラ

不満ですか? 許せないですか?
ですが今はそんな事は考えてはならないのです

これは 戦い 殺し合い 戦争 なのです

[メイン3] ゲーチス : 勝たなければ 捨てられるのですよ
───だから サザンドラ

[メイン3] ゲーチス : 『やつあたり』なら
あなたを負かそうとする そいつにやりなさい

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] サザンドラ : 刹那───

[メイン3] サザンドラ : 周囲の建物を無造作に破壊し クレーターを作るだけだったサザンドラの攻撃が
再びゼシルへと向けられたかと思えば

[メイン3] サザンドラ : サザンドラを軸に

虚空に亀裂が奔る───

[メイン3] サザンドラ : そして

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ :

『衝撃』ッッッ!!!!!


[メイン3] ゼシルウェンシー : へへ 分かりやすい

[メイン3] ゼシルウェンシー : 生憎とこういう”悪”意には慣れてんで

[メイン3] ゼシルウェンシー : 分かる 分かるぞ

[メイン3] ゼシルウェンシー : お前が どう動くのかなんて

[メイン3] ゼシルウェンシー : 動きを見切って、回避──

[メイン3] ゲーチス :
サザンドラ───あなたのそれは"悪"意ではない
      ノーマル
あなたの『生存本能』なのですよ
ワタクシですら想像だにできない
だからポケモンとは 駒にしておくのが良い生き物なのです

人間とは違うのです

[メイン3] ゲーチス : "化け物らしく"

[メイン3] ゲーチス : ただ"化け物らしく"

[メイン3] ゲーチス : それがあなたです

───サザンドラ

[メイン3] サザンドラ : もはや
自身ですらどうしていいのかわからない
これはサザンドラのまさに生存本能

───ゼシルが見たサザンドラのその時の表情は

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ :

"笑っていた"
おそらく


[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ : そして───その『やつあたり』による虚空の亀裂が
ゼシルへと伝播していったかと思えば

[メイン3] サザンドラ : 真っ赤な血で染め上げられたかのように熱を持った肉を以て───

[メイン3] サザンドラ :
急接近する───!!!!

[メイン3] ゼシルウェンシー : 回 避──

[メイン3] ゼシルウェンシー : ──不能だ と?

[メイン3] ゼシルウェンシー : ”俺ならこうする”
”だってこっちの方が効くから”
”相手を苦しめりゃ勝ちに近付く”

[メイン3] ゼシルウェンシー : そんな想定の全てを超えた

[メイン3] ゼシルウェンシー : ただのシンプルな八つ当たり

[メイン3] ゼシルウェンシー : がむしゃらなだけの怨返し

[メイン3] ゼシルウェンシー : それを不要と切り捨てるこの男には

[メイン3] ゼシルウェンシー : 読めない

[メイン3] ゼシルウェンシー : 避けられない

[メイン3] ゼシルウェンシー : その予想外には ずっとニヤついていて顔が 歪んで

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「くそが」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「俺の 負け か  !!!!! 」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 一撃を、その身に完全に受け

[メイン3] ゼシルウェンシー : この体は、完全に力を失う

[メイン3] ゼシルウェンシー : 周囲の建物を巻き込んで、見えなくなるまで派手に吹き飛んで……

[メイン3] ゼシルウェンシー : それでも、確実に”瀕死”になってるのは分かるだろう

[メイン3] ゲーチス : 「……フウ
 存外にとっても遊ばれてしまいましたね」

[メイン3] ゲーチス : その様子を まるで他人事のように高所から見下ろしながら
サザンドラを労わる事もなく あの男が吹き飛びきるのを見届ける
───最後まで 油断はならない

[メイン3] サザンドラ : 「……」

[メイン3] ゲーチス : 何です その目は?
フッ……助けも救いも此処にはありませんよ
その身は ワタクシの無限の勝利と支配の為の弾丸なのです

[メイン3] ゲーチス : むしろ

光栄に思いなさい

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : ……さて

[メイン3] キャロル : ああやって共闘の申し出は受けたものの、一先ず陣地に戻らねば話にならんとは感じているので

[メイン3] キャロル : リスクヘッジを考慮した結果一旦、戻らせてもらった
オレの全力ならこの街中全てを射程圏内にする事も可能だ

[メイン3] キャロル : 万が一は起きやしない

[メイン3] キャロル :

[メイン3] キャロル : そうして、陣地となる場所に足を踏み入れて

[メイン3] キャロル : そこに、本来では感じ得ない生命の兆候を探知する

[メイン3] キャロル : 連絡ポイントはここで───そこに侵入者がいる事になるのだが
少なくとも、事実だけを述べるなら

[メイン3] キャロル : そのまま歩き続ける事数分

[メイン3] キャロル : そこで目にしたのは────

[メイン3] サザンドラ :
───三つ首のドラゴン
無数の傷跡が見受けられ……翼も、そしてそれぞれの頭部の逆立っていたであろう毛はまるで蕾のように閉じそうになっていた

[メイン3] サザンドラ : 「グルルル…………」

[メイン3] キャロル : ………

[メイン3] キャロル : ドラゴン、と言うのは記憶の中では何度か見てきた事があったが…

[メイン3] キャロル : 経験には勿論なかった

[メイン3] キャロル : ……しかし、どうしてこうも傷付いたのか

[メイン3] キャロル : 野生…?にしてはだとするならあの男は間抜け過ぎる
こんなものを野生のままで操れるはずがない

[メイン3] キャロル : 次に、奴が罠に嵌めようとする可能性
これは保留

[メイン3] キャロル : 何故なら…ここまでボロボロになっているのならそれは…

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 自分達にとっての人形は、しかして人形などではなかった

[メイン3] キャロル : 彼女達にも心というものは確かに存在していて…

[メイン3] キャロル : 自分はそんな彼女達の主人でしっかりあれていたか…疑問にしかならなかったが…

[メイン3] キャロル : 少なくとも、これを放置するような精神性は
今は 無い

[メイン3] キャロル : 『無用不要と切り捨てていたもの救われてばかりだな』
こう言っていたのも自分だったか…

[メイン3] サザンドラ : 「…………!」

[メイン3] サザンドラ : キャロルの存在に気づいたサザンドラ───

[メイン3] キャロル : 少しずつ、歩み寄って

[メイン3] サザンドラ : サザンドラは

動く ものに 反応して 襲いかかり 3つの 頭で 食らいつくす 恐ろしい ポケモン。

少しずつ歩みとってくるキャロルも 例外ではない

敵として───……が

[メイン3] サザンドラ : 動けない。

[メイン3] サザンドラ : ただ 睨みつけるだけに留まる。

[メイン3] キャロル : その意思を感じながらも 動じずに

[メイン3] キャロル : 一歩一歩と、近寄って行く

[メイン3] キャロル : サザンドラが後首を少しだけ動かせば、すぐ届くと言う距離まで近寄り

[メイン3] キャロル : 「……大丈夫だ、悪いようにはしない」

[メイン3] キャロル : ……むう
やはり記憶の中にいる自分にまで手を差し伸べようとしたバカと違って上手く言葉が出せないが

[メイン3] サザンドラ : 「…………グルルルルッッ……!!!」
キッ、と睨み続け
歯を軋ませる……

[メイン3] キャロル : 「……そう吠えるな、危害を加えたりはしない」

[メイン3] キャロル : そのまま、指を『パチン』と鳴らして

[メイン3] サザンドラ : 「!」

[メイン3] キャロル : 甘い菓子のような物を 用意する

[メイン3] キャロル : 「………ほらよ」
と、その菓子を自分が食べるわけでもなくサザンドラの方に向ける

[メイン3] サザンドラ : 「…………」
キャロルを睨みつけるが
お菓子を見て その数秒後

[メイン3] サザンドラ : グー…… とお腹が鳴る

[メイン3] キャロル : ……

[メイン3] キャロル : それが何だかひどく面白くて
自分が作って使役していた人形達と同じような生き物だと思えて

[メイン3] キャロル : 大きく、笑う
この世界に来て初めての体験だった

[メイン3] キャロル : そして、その菓子を口元まで
口元まで

[メイン3] サザンドラ : 「───」
その キャロルが笑った姿を見て
先ほどまでの威嚇が嘘かのように きょとんとしていると

[メイン3] サザンドラ : 「!」

[メイン3] キャロル : ……どこが口なんだ?
いや…多分真ん中のか?

[メイン3] キャロル : ぐいーっと、背伸びをする
クソっ…ギリギリ届かねえ!?

[メイン3] サザンドラ : 「……」
そのまま自分から首を下げると
牙を剥かず 舌でそのお菓子を掬い上げるようにして

[メイン3] サザンドラ : ひょいっ

パクッ

[メイン3] サザンドラ : 「…………」
もぐもぐと 咀嚼する

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

[メイン3] サザンドラ : 「……」

[メイン3] サザンドラ : ポロポロと

まるで菓子を食べて押し出されたかのように

[メイン3] サザンドラ : 涙が零れると

[メイン3] サザンドラ : 「……」

[メイン3] サザンドラ : 「キュウ……」

[メイン3] サザンドラ : 目を瞑り
そのままキャロルの頬に頭部を軽くすりすりと押し付け

[メイン3] サザンドラ : そのまま元の体勢へと戻る

[メイン3] キャロル : 「んん……」
ちょっと変な感じ
こう言った生き物とは何年振りに関わっただろうか…そんな事も覚えてない

[メイン3] キャロル : 「……美味かったか?」

[メイン3] キャロル : 何を聞いているんだオレは
センチメンタルな事ばかり…

[メイン3] サザンドラ : 「…………」
蕾のように閉じそうな毛がほんの少しだけ逆立つと
またか細く鳴いて

[メイン3] サザンドラ : コクリ と頷いた

[メイン3] キャロル : その様子を受けて少し表情を和らげた後

[メイン3] キャロル : 「傷が治るまではここにいてやるよ」
と、その場に座り込んだ

[メイン3] ゲーチス : 「その必要はありませんよ
 キャロルさん」

[メイン3] ゲーチス : 育まれかけたその空間を 踏み荒らすかのように
その男は ずかずかと間も見ずに
キャロルに声をかける

[メイン3] キャロル : 「……ゲーチスか、ポイントはここであっているんだろうな?」

[メイン3] ゲーチス : 「ええ ここがそのポイントです
 しかしここを確保するまでに 少々諍いがありましてね
 …………サザンドラが負傷したのです」

[メイン3] ゲーチス : キャロルの傍にいるドラゴンに目をやる

[メイン3] キャロル : サザンドラ
そうか、コイツの名前はそう言うのか

[メイン3] ゲーチス : 「不思議な不思議な生き物でしょう
 ワタクシの生まれ育った地域では そう不思議な生き物ではありませんが
 …………サザンドラは凶暴なポケモンでして
 先ほども 存外暴れまくってしまいましてね」

[メイン3] キャロル : 「なるほど、その物言いだとお前のパートナーとでも言えばいいのか?」

[メイン3] キャロル : 「……それとも、お前にとっての道具か…何にせよお前の話を聞いていない」

[メイン3] ゲーチス : 「───道具 ですか
 見ようによっては そうかもしれませんね
 ですが サザンドラも戦いたくて戦っているのです
 ワタクシはただ 「解放」しているだけなのですよ」

[メイン3] ゲーチス : するとゲーチスはサザンドラに何か薬草な物を
口にさせようとする

[メイン3] サザンドラ : 「……! …………」

[メイン3] サザンドラ : もはや何か諦めたかのように
鳴く事もなく それを受け入れ

[メイン3] サザンドラ : 萎びていた毛が元通り逆立ち始める

[メイン3] キャロル : 「……何だそれは?」

[メイン3] ゲーチス : 「ふっかつそう これでポケモンを全快させる事ができるのですよ
 人間とは違って単純です 少々苦いですが
 信頼関係を築いているからこそ そしてサザンドラの凶暴な性質を
 ありのままに させてあげる為にも」

[メイン3] ゲーチス : 「こうやって ワタクシがこれを与えているのです」

[メイン3] キャロル : 「……」

[メイン3] キャロル : 「……本当にそうなのか?本当に戦いたいと思っているのか?」

[メイン3] キャロル : 三首の龍の方を見て、話し掛ける
言葉を発せるとは思ってはいないが

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

[メイン3] ゲーチス : 「無言 それは貴女もしたことがありましたね
 承諾という形で…… ところで貴女のサザンドラに対する先ほどの行為……
 厚意……なんと麗しかった事でしょう ですが」

[メイン3] キャロル : ……
ゲーチスの方を見る

[メイン3] ゲーチス : 「それがポケモンの ありようを歪めているのですよ
 あなたが甘やかす事で サザンドラは本来の凶暴性を失い……
 本来の生き方を忘れ そして二度と自身を解放できなくなるかもしれません
 でしょう?」

[メイン3] キャロル : その視線は、共闘者へのそれではなく
軽蔑や怒りを込めたそれであり────

[メイン3] キャロル : 「……在り方としては、恐らくは今のオレの行為がそれを歪めるものなのだろう」

[メイン3] キャロル : 「だが 無理に解放する生き方ばかりが 果たして本当に生き物の在り方なのか?」

[メイン3] キャロル : 「オレはそうは思わないな お前の考え方がどうであれ」

[メイン3] キャロル : 「そもそも そう考えるのであれば お前に従わせずに どこか遠いところで離してやるのが筋という物だろう」

[メイン3] ゲーチス : 「…… …… キャロルさん は そうお考えなのですね
 フフフ …… 」

───その真っ直ぐな視線だからだろう
伝わってくる そして理解できる

軽蔑 怒り

[メイン3] ゲーチス : 目を瞑る

[メイン3] ゲーチス : が……

[メイン3] ゲーチス : その装束に刻まれた瞳の意匠はキャロルから決して 目を逸らさない

[メイン3] ゲーチス : 「確かに それが筋でしょうね
 それが常人のトレーナー に対する話であれば ですが」
赤と白で彩られた球体を取り出すと

[メイン3] ゲーチス : サザンドラに向けて赤い閃光が放たれ
有無を言わさずにその球体へと戻っていく。

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシは 貴女とともに叡智を手にし
 人を導く運命にあるのですよ」

[メイン3] キャロル : 「………」
そして恐らくは、アレこそがあの龍を従える鍵

[メイン3] キャロル : 「確かに──そうかもしれないな、だが」

[メイン3] キャロル : 「少なくとも生き物の在り方を第一に優先しようとして 無責任に戦わせ続けようとして労いも何もしない奴に!」

[メイン3] キャロル : 「人を導く資格があるだと?妄言壮語も大概にするんだな!」

[メイン3] ゲーチス : 「キャロルさん …… ……
 そういった 運命を導く者に相応しくない 利己的
 後の世になれば 古い理想論になるような 考えを捨てさえすれば
 貴女は 『奇跡』を創造すらできる王 その器になれそうなものですが」

[メイン3] ゲーチス : 感情の発露

それが 上っ面の関係を 別った

[メイン3] ゲーチス : 「フフフ…… 惜しいですね
 70億もの人類を そしてそれ以上の生命を 導ける王
 その器になれるかもしれない
 と 密かに期待はしていましたが」

[メイン3] キャロル : 理想の差別

お互いの関係性を断つに十分すぎる物だった

[メイン3] キャロル : 「…王、違うな」

[メイン3] キャロル : 「オレは……」

[メイン3] キャロル : 「思い出の探求者!!王になるつもりなど元からない!」

[メイン3] ゲーチス : 「───」

その時 男は
おそらく何カ月かぶりに 人前で

[メイン3] ゲーチス : 歯を軋ませた

[メイン3] キャロル : 「………ハハハハ!少しは男らしくなったではないか…ええ!?」

[メイン3] ゲーチス : 「…………キャロルさん
 話を戻しましょう 最初から いえ
 この場の最初ではなく 会ったときにまで」

目を細め にらみつける

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシは 叡智を 探し求めている
 そして貴女も 探し求めている」

[メイン3] ゲーチス : 「そしてそのために共同戦線を張ったわけですが
 それは 叡智を正しく扱おうする者同士だと 納得していたから ですね」

[メイン3] キャロル : 「そうだ」

[メイン3] ゲーチス : 「…………では 今ここでお互いの『正義』のすれ違いが生まれた」

[メイン3] ゲーチス : 「これが何を意味するかは おわかりですね? わかって
 言っているんですよね?」

[メイン3] キャロル : 「オレは叡智を手にし オレの正義を 何より 生き物の輝きを」

[メイン3] キャロル : 「わかってるとも!」

[メイン3] ゲーチス : 「そんなもの ワタクシはわからなくて 良い!」

そして とうとう
語気を荒げ───本性を現す

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシは 支配者となる
 全ての叡智をこのワタクシが 総取りし
 ワタクシの為の秩序を ワタクシの為の世界を」

[メイン3] キャロル : 「在り方を尊重するお前が! 理解しようとしないとは! 言語道断だな!!」

[メイン3] キャロル : 少女もまた、大きく声を荒げて

[メイン3] ゲーチス : 「フフフ…… 安心なさい
 言語道断も できませんよ 何故なら……」

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : 「あなたはここで」

[メイン3] ゲーチス : 「華々しく散るんですからね……!!!」

[メイン3] ゲーチス : 「───」

[メイン3] ゲーチス : 「行け サザンドラ」

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] サザンドラ : 赤い閃光が放たれ

───キャロルの目の前に三つ首の竜が 立ちはだかった

[メイン3] キャロル : 「………」

[メイン3] キャロル : 対する少女は─────

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : ────何もしない

[メイン3] キャロル : ただ、そのまま手を腰に当てたまま

[メイン3] キャロル : 一言

[メイン3] キャロル : 「来い やつあたりくらいなら受けてやるよ」

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] ゲーチス : 「…… …… フ」

動揺 ではない むしろそれを滑稽に思い

「フハハハ───!!! !!!
 そんな軟で華奢な肉体で 口だけは達者な娘ですね……」

[メイン3] ゲーチス : 「見上げた根性です
 もうすぐ見下げ果てる事になるのですがね」

[メイン3] ゲーチス : 「最後に一つ 申しあげておきましょう」

[メイン3] ゲーチス : 「おつかれさまでした」

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : 「サザンドラ───」

[メイン3] ゲーチス : もはや命令せずとも
コイツを殺せ と言わんばかりに視線を送る

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

[メイン3] キャロル : 「────サザンドラ」

[メイン3] サザンドラ : その六枚の翼を広げ
サザンドラは───…………

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ : 何もしない。

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] ゲーチス : 「…………!!?」

[メイン3] ゲーチス : 「サザンドラ」

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

[メイン3] ゲーチス : 「サザンドラ───!!!!!!」

[メイン3] ゲーチス : キッ とにらみつけ
そのまま キャロルへと視線を移す

[メイン3] キャロル : 「…………」

[メイン3] キャロル : 「……オレはこう言った生き物のことは知らないが」

[メイン3] キャロル : 「生き物は生きている以上、何にせよ意志があると思う」

[メイン3] キャロル : 「本能だけではない 生物の役割を越えた意志が」

[メイン3] キャロル : 「だから その意志に従うのであれば」

[メイン3] キャロル : 自分の記憶の一つ

[メイン3] キャロル : 大切にした人形達は、最後まで自信に支えてくれた事を思い出して

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 「なつきってのが足りてないんじゃないか?」

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 見返すような笑顔で、そう言い放った

[メイン3] キャロル : そして、サザンドラに手を差し出して

[メイン3] キャロル : 再び指を鳴らして、菓子を取り出し

[メイン3] キャロル : 「また食べるか?」
なんて、そう問いかけた

[メイン3] ゲーチス : 「…………サザンドラ……それは"サンクチュアリ" ではないのです
 惑わされてはなりません………… クッ…… クググッ……!!!!」

[メイン3] サザンドラ : 「───!」
そのまま キャロルの方へ

[メイン3] ゲーチス : 「戻れェッッ!!!!」

[メイン3] ゲーチス : 再び 球体を突き出し
スイッチを押そうとする

[メイン3] キャロル : ──させるか!

[メイン3] キャロル : と、近場の石ころを拾い

[メイン3] キャロル : 球体に向けて思いっきり投げつけた

[メイン3] ゲーチス : 「ッ!!! なっ……!」

男は 口先こそは長けていたが
咄嗟の 想定外のやり口には 対応できず

[メイン3] ゲーチス : そのままボールを弾かれ 壁に叩きつけられる

[メイン3] ゲーチス : 「……!!! こんなことが……!!!」

[メイン3] ゲーチス : 「あ っ て い い は ず が な い の で す …… !!」

[メイン3] キャロル : 「あっていいさ!」

[メイン3] キャロル : 「生き物なんて…」

[メイン3] キャロル : 「"思い出"の積み重ねだからな!!」

[メイン3] ゲーチス : 馬鹿な 今度は ポケモンを一匹も持たない
軟で 華奢な こんな娘に…… "思い出" "思い出"だと……そんなもの
ワタクシの辞書には 利用の為の裏付けでしかない…………!!!

[メイン3] サザンドラ : 「…………」
そのまま振り返り

[メイン3] サザンドラ : ゲーチスを

ただ 睨みつける

[メイン3] キャロル : 「……オレからお前に一言だけあるとするなら」

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシの目論見が…… こんな事で……
 バカな バカな バカな …………」
歯を軋ませ 脂汗を滲ませながら睨みつける

[メイン3] キャロル : 「とっとと 立ち去れ
   この龍のサンクチュアリにお前が入る残響は無い!」

[メイン3] ゲーチス : 「あぁあああああああああっっっ!!!!!!」

絶叫───そして すぐに訪れたのは 沈黙

[メイン3] ゲーチス : 「…………」

[メイン3] ゲーチス : 「いいでしょう
 所詮 駒の一つが失われたにすぎません」

[メイン3] ゲーチス : 「…………まだ 手立てはある」

[メイン3] ゲーチス : その場から逃走しようとすれば
周囲に突如として人影が現れ キャロルとサザンドラに殺意を向ける

[メイン3] キャロル : 「……なるほど、な」

[メイン3] ゲーチス : 「情けない話にはなりますが
 もはやプライドの問題ではないのですよ…………逃がしてくれますよね?」

[メイン3] キャロル : 「3秒だけ猶予をやる」

[メイン3] キャロル : そう言い、指を3本立てて

[メイン3] ゲーチス : 「3秒ですか フフフ……温情ですね
 それだけあれば十分 捨て台詞の一つは残せます」

[メイン3] ゲーチス : 黒い影が ゲーチスに纏わりつき

[メイン3] ゲーチス : 「だれがなにをしようと

 ───ワタクシをとめることはできないのですよ!」

[メイン3] ゲーチス : まるで 目論見がこれで破綻していないような事を示唆しつつ

[メイン3]   : ゲーチスはすでにその場にいなかったかのように
虚空へと消えた。

[メイン3] キャロル : 3本目の指を折り畳んで

[メイン3] キャロル : 忌々しげに舌打ちをして

[メイン3] キャロル : 三首の龍を拘束していたとされる球を見て

[メイン3] キャロル : 「フン!」
と、踏み潰した

[メイン3] キャロル : 「……お前の好きなようにするといい、一応これで自由だ」

[メイン3] キャロル : サザンドラの方に視線を向けて

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

しかし サザンドラはその場から一向に離れようとせず
むしろ 翼を羽ばたかせると キャロルの傍へと更に近寄って

[メイン3] サザンドラ : 「キュゥ…………」

[メイン3] サザンドラ : か細い声で 再び鳴いた

[メイン3] キャロル : 「………むう」

[メイン3] キャロル : 「…仕方ない、か…なら行くか!」

[メイン3] キャロル : と、サザンドラの方に寄り添って

[メイン3] キャロル : 次に自分が向かうべき戦地にと 覚悟を決めた
これを巻き込むのは少し居た堪れないが

[メイン3] キャロル : まあ こう言うのも悪くない
オレが いるのだから
こういった奇跡も また

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

サザンドラは 彼女と出会った間もない
だが それでも彼女に絶対の信頼を置いたのは
彼女が優しいからだけではない───彼女が覚悟を決め そして奇跡を、奇蹟を、その手で……引き寄せるからだ

[メイン3] サザンドラ : 『トレーナー』としての才を

サザンドラは 認めたのだ

[メイン3] サザンドラ : 破壊しか知らなかった竜は羽ばたき
キャロルと共に往く───…………

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : 「ええ あなた達は ひとまず
 下がっていて 良いですよ …… ……
 さて …… 原型を留めていればいいのですが」

[メイン3] ゲーチス : ゲーチスが 一時退却し
キャロルの前 から 姿を消して
数分後 …… ……

[メイン3] ゲーチス : 彼は その重い足取りで
ある場所へと 向かっていた

[メイン3] ゲーチス : それは …… ……
確実に 瀕死になったであろう
サザンドラ を 相手に単身で 生身で 挑み
交戦した 好戦的な あの男が吹っ飛んだ先……!!!

[メイン3] ゲーチス : 「生きていれば 手厚く保護
 そして迅速に治療を行いましょう
 ワタクシとは 顔は合わせていない…… 運が良ければ……」

[メイン3] ゲーチス : 「ですが それを断れたり
 あるいは すでに死んでいれば……
 その力を 死体から 解剖し 分析しましょう…… もしかしたら
 一縷の希望 に なりえるかもしれませんのでね」

[メイン3] ゲーチス : そうして ゲーチスは
とうとう その場所へと……

[メイン3] ゲーチス : しかし

そこには───

[メイン3] ゲーチス : ゲーチスの知らない

[メイン3] ゲーチス : 死体が そこには転がっていた

[メイン3] ゲーチス : 「………… !?」

[メイン3] ゲーチス : 違う
ワタクシが見たのは ワタクシの道具だった サザンドラ が
吹き飛ばしたのは この男ではない

[メイン3] ゲーチス : 「何 ……
 ワタクシは 幻でも見ていたというのか?
 いや そんなはずは…… これは一体……」

[メイン3] ゲーチス : あらゆる可能性を考えようとするゲーチスだったが
その時
長年の間に培われた勘 いやあるいはその可能性に
すぐ様 辿り着いたのか───

[メイン3] ゲーチス : 滲む脂汗を 拭わず
ゆっくりと 周囲を見渡そうと

[メイン3] : それに違わず

[メイン3] : 「こんなところで、何をお探しでしょう?」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「──良ければお手伝いできるかもしれませんよ?」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 影から男がゆらりと現れる

[メイン3] ゼシルウェンシー : へらへら、とした所作で振られる腕

[メイン3] ゼシルウェンシー : それは確かに”かみくだかれた”はずの腕

[メイン3] ゲーチス : 朧の光だが 確かに光に"まだ"照らされているゲーチス
だが影の輪郭を境に 決して戻れぬ領域から 噛み砕かれたはずの腕を振るのは

間違いない あの男 だった

[メイン3] ゲーチス : "じこさいせい"か……?
この男は 人に見えて 実は何かしらのポケモン……
いえ バケモノである事には ポケモンであろうとなかろうと 拭えぬ事実 ……

[メイン3] ゲーチス : 落ち着け
…… この男は 今なんと言いましたか

[メイン3] ゲーチス : ──良ければお手伝いできるかもしれませんよ?

[メイン3] ゲーチス : …… …… ……
思慮 を あえて 浅い程度で終えた ゲーチス
すると 欠けた三日月のように 笑みを引くと

[メイン3] ゲーチス : 「お手伝い ですか
 それは助かりますとも
 ワタクシは今 とんだ災難に見舞われてしまいましてね」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「ほう ほう」

[メイン3] ゲーチス : まるで初対面かのように ワタクシは 白を切る
が 同時に この男が ワタクシを知っているかどうか 確かめる

[メイン3] ゼシルウェンシー : ……
この状況で 交渉を選びますか
ただの丸腰に見えるが

[メイン3] ゼシルウェンシー : 面白え

[メイン3] ゼシルウェンシー : 何者かの確証も ない
ただやるよりも 話を聞いた方が楽しそうだ

[メイン3] ゼシルウェンシー : お互い知らない体で ひとまず話を聞こう
今の俺はただの親切なゼシルさんだ

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「それは大変でしたね 俺ったら親切なもんで 困ってる人は見過ごせねえんです
 お聞かせもらえますかねえ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : もちろん先ほどの戦闘からして、ゼシルウェンシーという男はそんなタマではないのだが

[メイン3] ゲーチス : 「助かります …… ……」
ふん …… この男が 困っている人は見過ごせないと
が 白々しいのは ワタクシも同じ …… しいて言うなら
向こうは気づいていない かもしれません

[メイン3] ゲーチス : 「単刀直入に言いましょう
 ワタクシは かけがえのない"物" を失ってしまいました
 …… …… ワタクシはこの町に 叡智を求めて 足を踏み入れたのです」

[メイン3] ゲーチス : だが 真実は織り交ぜなければ
嘘は 必ず剥がれるものだから

[メイン3] ゲーチス : 「叡智を手にし 人々をあまねく導となるのが
 ワタクシ の 使命
 ですが それどころか ワタクシは 失ってしまったのです」

[メイン3] ゲーチス : 「力を」

[メイン3] ゲーチス : 影に紛れた 従者 も
ワタクシと同じようにポケモンを扱う
だが …… この男に通用するほど"出来上がってはいない"
それに この距離では…… ワタクシが先に殺されるでしょう

[メイン3] ゲーチス : それに 叡智を手に入れられるほどの実力も あるはずがない

[メイン3] ゲーチス : だからこそ 賭けるのです
この男 その可能性に …… ……

また『バケモノ』の手を借りる事になりますが

[メイン3] ゼシルウェンシー : ふむ 理想ばかりが織り交ぜられた 美しい話です

[メイン3] ゼシルウェンシー : でもそれってのはつまり

[メイン3] ゼシルウェンシー : 悪意の癒着しきった現実が裏にあるってこと

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「それはそれは、心中お察しします」

[メイン3] ゲーチス : まだ ワタクシの駒となるポケモンが届くには 時間がかかる
だが あのキャロルという娘に それが通用するか わからない
ならば この男を手駒にした上で 総力戦にもちかけるしか 手はないのです……!

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシの 心中を察してくれるとは ……
 なんて温情な方なのでしょう …… 」

[メイン3] ゲーチス : 「……」

[メイン3] ゲーチス : 「つまり ワタクシは 力が欲しいのです
 叡智を授かるために ワタクシが いえ 叡智を正しく使える者が!
 人々を導けるよう 叡智を確実にこの手に握る事ができるように ……」

[メイン3] ゲーチス : 転がっている死体を 一瞥し

[メイン3] ゲーチス : 「………… この死体も 叡智を求めた者の末路なのでしょうか
 ほんの数時間前までは 活気のあった町 ……
 治安も それなりに よかったと見受けられます」
 

[メイン3] ゲーチス : 「この死体が 善か 悪だったか
 どちらにせよ 叡智を求めて人死にが出始めているのでしょうか
 なんと恐ろしい事なのでしょう」

[メイン3] ゲーチス : 「この破壊の跡もそうです」

[メイン3] ゼシルウェンシー : ぴゅい~♪ 内心で口笛

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「ひひひ、恐ろしいこともあるもんですね。こりゃ大変だ」

[メイン3] ゲーチス : ええ 本当に ……
視力をほぼ失った右目でだけ 睨みつけたいほどですよ
あなた をね

[メイン3] ゲーチス : 「このままでは この町そのものも脅かされます
 あなたは ただここに偶然 足を踏み入れたわけではないでしょう
 ワタクシも 偶然 ここに足を踏み入れたわけではありません」

[メイン3] ゲーチス : 「轟音…… そして破壊の跡 を 見て
 一抹の不安と そして一縷の希望を以て 赴いたのです」

[メイン3] ゲーチス : 「そして こうして出会えたのです」

[メイン3] ゲーチス : 「きっと あなたには 力があるのでしょう …… !
 そうなのでしょう ……! ワタクシは 力 が
 必要なのです! この命を削ってでも……」

[メイン3] ゲーチス : 下手すれば藁にでも縋るんじゃないかという 勢いで
男は涙を浮かべ 懇願する

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「…… ……」

[メイン3] ゼシルウェンシー : たとえこの男がよく回るのが口だけだとしても
あるいは頭だけだとしても

[メイン3] ゼシルウェンシー :
     ・・
これは……ただじゃないな

[メイン3] ゼシルウェンシー :
 ・・・・・・・
「命を削ってでも……ですか。大したお覚悟だ」

[メイン3] ゲーチス : 「ええ もう ワタクシも 長くはない身です
 無駄に 精魂を枯らすぐらいであれば
 この現状を 指くわえて 見ているぐらいなのであれば……」

[メイン3] ゲーチス : 「ワタクシの 何もかもを "解放"してでも……!」

[メイン3] ゲーチス : 「力 が 必要
 いえ 力が 欲しいのですよ……!」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 力、か

[メイン3] ゼシルウェンシー : 力、それは勝利

[メイン3] ゼシルウェンシー : 勝利、それはこの身

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「その力 ええ、そう……ご明察の通り 心当たりがありますですよ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「その覚悟……本物でしょうね?」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 少し面白いことが思いついた

[メイン3] ゼシルウェンシー : もし目の前の男が本気ならば そうだ
ちょっと遊ぶのも 悪くはない

[メイン3] ゲーチス : 「ええ…… 贋作ではありませんとも
 もはや ワタクシが 叡智を手にするには
 ついで では 足りないのです 確実に 確実に 勝ち続けなければ
 ならないのです! 助けも 救いも ワタクシにはありません

 聞こえは悪い かもしれませんが 正直に言いましょう
 『利用』するしか ないのです! 誰かを 心苦しくはありますが……!
 だって ワタクシには」

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : 「"それしかない"っ!」

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「…… ……」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「……く、くくく」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 本心かどうか 信用できるかどうか
それはもう "どうでもいい"

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「ああ……なるほど」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「アナタはどうやら。確かに"勝利"に、"理想"に、全てを賭けられるようです」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「俺もですよ」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「俺もね──勝ちたい」
「勝って勝って、勝って勝って勝って勝ちたい!」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「アナタに協力すれば。いい”勝利”が見れそうだ」

[メイン3] ゲーチス : フハハハ…… "化け物らしく"笑いますね
そして 化け物らしい嗅覚
シンプルな思想ほど 扱いやすいものはない

[メイン3] ゲーチス : 「ええ "みっともない"ような真似は
 決して いたしませんとも」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「ただ、一つだけご注意を」

[メイン3] ゲーチス : 「…… ……」
ほお 勝利以外が目に見えなくなり
ワタクシさえも 殺してしまうかもしれない そういう事でしょうか?
それぐらいは読み通り ワタクシには生存の為のプランぐらい用意は───

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「”勝利”に必要なのは」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「そんな”解放”でも、何なら”理想”でも”真実”ですらない」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「絶対の!!」

[メイン3] ゼシルウェンシー :

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「── ” 支 配 ” ! ! !」

[メイン3] ゼシルウェンシー :

[メイン3] ゼシルウェンシー : 俺の故郷じゃ、勝つ奴はでっけえ支配者だけだった!

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「名乗り遅れましたね」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「我が名はゼシルウェンシー!勝利の呪い!!」

[メイン3] ゼシルウェンシー : 「この呪い、どうぞ”支配”を期待するですよ!」

[メイン3] ゲーチス : 「"支配"───!!!?」

そのワードを ワタクシは長年 口にしてきた
だが この男の それは ……

[メイン3] ゲーチス : もっと 別の 何かが 読み取れ───

[メイン3] ゲーチス : が……

[メイン3] ゲーチス : 「フッ フフフ ……」

[メイン3] ゲーチス : その 支配 の 意味 を
ワタクシ の 望む 支配 に 書き換えれば いいだけの事……!!!

[メイン3] ゲーチス : ワタクシが先ほど喫してしまった弱さを埋める呪い
そんなもの

[メイン3] ゲーチス : 「いいでしょう
 アナタに 与えましょう! そして ワタクシも手にしましょう
 永遠の"支配"を!!!!」

大歓迎ですよ

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス : フッフッフッ

もはや この機に至って
余計な言葉なぞ あなたにとっても不要でしょう
勝利して支配する それだけです

[メイン3] ゲーチス : 筋力増強。

[メイン3] ゲーチス : 衰えていた
否 麻痺していた体機能が 戻ってくるのを感じる

[メイン3] ゲーチス : 骨密度上昇。

[メイン3] ゲーチス : そして その身体を支える軸が 大樹となる

[メイン3] ゲーチス : 視力増加。

[メイン3] ゲーチス : 右目に灯る 鮮やかな光景

[メイン3] ゲーチス : 聴力上昇。

[メイン3] ゲーチス : ワタクシ以外の目論見はもはや看破できましょう

[メイン3] ゲーチス : 脳内物質複製。
伝達速度向上。
神経増設。

[メイン3] ゲーチス : 完全に 麻痺していた機能は───今ここに灯った

[メイン3] ゲーチス : その『真実』によって
   理想
『無限の勝利』への軌跡は今 敷かれた

[メイン3] ゲーチス : 戦い、殺し合い、戦争。
それが あなたの全てですか
ワタクシはそうではありませんが……

[メイン3] ゲーチス : "無限の勝利"
そこには何の疑問の余地もない。

[メイン3] ゲーチス : ワタクシが
負けるはずがないのですから───
そんな事は

[メイン3] ゲーチス : あ っ て い い は ず が な い の で す !!!!

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] ゲーチス :  

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] 甘粕正彦 : 「……さて、争いもまばらだが、最終局面、と呼べる段階だろうな」

[メイン3] 甘粕正彦 : 白の外套を纏い、己をなんら隠すことなく
甘粕正彦は行進する

[メイン3] 甘粕正彦 : 「……叡智を得られる、か」

[メイン3] 甘粕正彦 : 手慰みに果実を小さく投げながら、乾いた音を夜中に響かせ歩く

[メイン3] 甘粕正彦 : 「……そういえば、あの少女はどう化けたか」

[メイン3] 甘粕正彦 : ふと思いつきの様に呟き、りんごを一度天に放り投げる

[メイン3] 甘粕正彦 : 直線のまま上へ放り出され、真っ赤な果実が月と重なり……

[メイン3] 甘粕正彦 : また、甘粕の手元へ落ちる

[メイン3] 甘粕正彦 : そして、果実は手慰みに使われ、甘粕は齧る様子すらない

[メイン3] 甘粕正彦 : ”叡智“を得られる、新たな禁断の果実

[メイン3] 甘粕正彦 : それを遊び道具にしながら、甘粕は暗がりの中へと歩いていく

[メイン3] 甘粕正彦 : 輝きを放つ物達が、この果実を求め追ってくる姿を幻視し、微笑みながら

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] 甘粕正彦 :  

[メイン3] キャロル :

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 血だらけの身体

[メイン3] キャロル : それを引き摺って

[メイン3] キャロル : 少女はただ、闘志を燃やし続ける

[メイン3] キャロル : そもそも 自分がこんな奴だったのか
それすらもわからなかったが

[メイン3] キャロル : 龍の方は、一旦仕込みと共に廃ビル内に休ませることにした

[メイン3] キャロル : ……淡々と、歩き作業を続けていく

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 廃ビル群から抜けた先は最早誰もいない居住区

[メイン3] キャロル : 生活の跡を感じさせるそこにて、少女もまた身を休める

[メイン3] キャロル : 血で紅に染まった赤いドレスをそのままに
金髪の少女はただ1人、仕掛けを

[メイン3] キャロル : ………

[メイン3] キャロル : アイツらが いや、隣の獣人に関しては知らないが

[メイン3] キャロル : ただ、オレ達の逃走を手助けするように庇ってくれていたことは見えた

[メイン3] キャロル : ……こうやって他人の為に命をかけようとする奴は

[メイン3] キャロル : いや、それはオレもか

[メイン3] キャロル : …兎も角、これで『2段階目』の仕込みは完了した

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : このボロボロの少女は
本来であるならばこの街の支配者として絶対的に君臨することすら可能だろう

[メイン3] キャロル : 理由は単純明快

[メイン3] キャロル : 頭脳の非凡さや知識量の豊富さも際立つが

[メイン3] キャロル : 単に『スペック』が違う

[メイン3] キャロル : リミッターを超えた人間も

[メイン3] キャロル : 満月の魔法少女も

[メイン3] キャロル : 花と人形の少女も

[メイン3] キャロル : 病原菌が如き勝利欲求の塊も

[メイン3] キャロル : 武の心得を得た獣人も、何もかもを蹴散らせるだろう
それこそ、本来なら束になっても

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 3段階目の仕込みを終えた

[メイン3] キャロル : 地球の人口というものを想像できるのなら、それが一番容易いだろう

[メイン3] キャロル : この小さな躯体に込められた破壊力は

[メイン3] キャロル : それら全てが命を燃やした時の総出力よりも上

一個人の力を完全に超えた理外の存在

[メイン3] キャロル : 代わりとして
少女は
想い出を

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : ──────全ての仕込みを終えて

[メイン3] キャロル : 元の陣地、三頭の龍の元に帰投する

[メイン3] キャロル : 「……待たせたな」
と、『どくけし』を持ってそれをかける

[メイン3] サザンドラ : 「…………」
一歩歩くだけでも滲み続け居た『どく』は
『どくけし』をかけられた事で みるみるうちに消えていく

[メイン3] キャロル : 使い方が合ってるかは知らないが

[メイン3] キャロル : 合ってた
良かった

[メイン3] キャロル : なんて、感想が出る程度には
オレも変わった─────

[メイン3] キャロル : いや、元からか

[メイン3] サザンドラ : 消えたのをカラダで感じたサザンドラは
大きく息を吐きだし 少々逆立った毛を蕾のように閉じかけながらも
その六枚の翼をゆったりと広げて 一 二回ほど 羽ばたかせる

[メイン3] キャロル : ゆっくりと近付いて

[メイン3] キャロル : 胴の部分を優しく撫でる

[メイン3] キャロル : 「もう休んで いい」

[メイン3] キャロル : 「戦わなくて いい」

[メイン3] サザンドラ : 「……」
そんな言葉をかけられたのは サザンドラは初めてだった

[メイン3] サザンドラ : だが キャロルを 命令とはいえ
最善とはいえ 信じたとはいえ 彼女に直接攻撃を喰らわせたことに
思う事があるのか 二度ほど瞬きを挟んで俯く

[メイン3] キャロル : 「……命令とは言えオレを攻撃した事に何か思う事があるのかもしれないが」

[メイン3] キャロル : 「オレはこの通り問題は無い」

[メイン3] キャロル : 強がりだ
痛みこそもう無いとはいえ、骨は数本ヒビは入っているだろうし内臓へのダメージも恐らくある

[メイン3] キャロル : ……いや、うまく隠し通せないな
と、僅かながらに口から流れ出た血を自らの手で拭いて

[メイン3] サザンドラ : 「……!」
それを見た サザンドラは思わず キャロルの頬を擦る
サザンドラは種の時点で破壊の性質に捉われている
ゆえに 癒す事は決してできない

[メイン3] サザンドラ : が どうにか 労わろうとすることはできた

[メイン3] キャロル : 「………」
…………

[メイン3] キャロル : 言動もこの心情も本当に空っぽになった

[メイン3] キャロル : 自分は今までそんな事をされた事が無かった、と言うのが最も大きい理由だったから

[メイン3] キャロル : ……

[メイン3] キャロル : 「優しいやつだよお前は」
と、そう語りかける言葉以外持ち合わせられなかった

[メイン3] キャロル : ……

[メイン3] キャロル : 自身がこれから戦うにしても、『想い出』は必要不可欠

[メイン3] キャロル : だからきっと 今から行う行動はその為のものであり

[メイン3] キャロル : 決してオレからの 本心では
本心 では

[メイン3] キャロル : 「なあ」

[メイン3] キャロル : 「嫌な想い出 忘れたくないか?」

[メイン3] サザンドラ : 「───?」

[メイン3] サザンドラ : 「…… ……」

[メイン3] サザンドラ : その時 サザンドラの脳裏を過ぎる思い出は
───道具のように扱われた毎日だった

[メイン3] サザンドラ : それを 当たり前 だと思っていた
ポケモン とは こういうものなのだと
主人に牙を剥くほどの憎悪を抱くのも サザンドラ が サザンドラ だったからだと

[メイン3] サザンドラ : そう思っていた

[メイン3] サザンドラ : だが 今はそうは思わない
血液一滴も残らない憎悪と力で掻きむしる事だけが
自分ではないのだと

[メイン3] サザンドラ : 愛など見えないと思っていた
そもそも愛を知らなかった

[メイン3] サザンドラ : 淡く優しく触れてくれたその手が
暖かく温もった手が
モノズとしてこの世に生まれたその瞬間の 喜び を 思い出させてくれたのだ

[メイン3] サザンドラ : 今までの こんな思い出はもういらない
根底から 否定して 燃やしてしまおう

[メイン3] サザンドラ : サザンドラは

[メイン3] サザンドラ : 頷いた。

[メイン3] キャロル : "妖精"の様な手で、サザンドラの頭を撫でて

[メイン3] キャロル : 1…

[メイン3] サザンドラ : 2の

[メイン3] キャロル : ポカン!

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] サザンドラ : 『サザンドラ は ゲーチス からの 教育 を すっかり 忘れた ▽』

[メイン3] サザンドラ : だが───皮肉にもその教育があったからこそ
それがバネとなりて キャロルの優しさをこんなにも感じられたのだ

[メイン3] サザンドラ : 最後の最後 本当に忘れてしまうこの一瞬だけ
かつてのマスターとして見てあげて そして感謝だけはしよう

[メイン3] サザンドラ :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 『キャロル は 道具としての 想い出 を しっかり 入手した ▽』

[メイン3] キャロル : 故に─────自身が嘗て使う者であったからこそ
それは確かに胸に響き 同時に優しさを感じさせる事ができた

[メイン3] キャロル : 最初で最後 覚えて直ぐに焼却するこの時は 更に1人のマスターとして 怒りを露わにしよう

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 「……ゆっくり夢の中でおやすみ」
そう最後に語らいかけて

[メイン3] サザンドラ : 「…………」

[メイン3] サザンドラ : コクリ、と頷けば

[メイン3] サザンドラ : 「キュウ……」

[メイン3] サザンドラ : 可愛らしい声を立て
そのまま毛を蕾のように閉じ 眠りにつく

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : ───ここに来て、色々なことがあった

[メイン3] キャロル : 初めての移動
初めての利用し合うだけの関係

[メイン3] キャロル : 初めての相互理解
初めての共闘者

[メイン3] キャロル : 初めて見た人間
初めて見た生き物

[メイン3] キャロル : 初めて得た感情
初めてやった行動は

[メイン3] キャロル : 『夢』も

[メイン3] キャロル : 『真実と理想』も

[メイン3] キャロル : 『人間讃歌』も

[メイン3] キャロル : 『勝利』も

[メイン3] キャロル : 『勇気』も

[メイン3] キャロル : 今得た、『悪夢』も

[メイン3] キャロル :
ポケット
懐に収まるような、そんな不思議な想い出達

[メイン3] キャロル : それらを 自分は 背負って

[メイン3] キャロル : 外に、歩いて──────

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル : 音が 鳴った

[メイン3] キャロル : 弦が 弾かれた

[メイン3] キャロル : 『想い出』も『経験』も
ここで多くのものを得た 自分は

[メイン3] キャロル : もう一度 殲琴を鳴らして

[メイン3] キャロル :  

[メイン3] キャロル :  

[メイン3]   :  

[メイン3] 『想い出の守護者』 :  

[メイン3] 『想い出の守護者』 :  

[メイン3] 『想い出の守護者』 : 終曲を奏でに

[メイン3] 『想い出の守護者』 : 最後の戦火へと

[メイン3] 『想い出の守護者』 :  

[メイン3] 『想い出の守護者』 :

[メイン3] 『想い出の守護者』 :
この物語に
canzone

[メイン3] 『想い出の守護者』 :
残響たる アクセントを
sforzato riverbero

[メイン3] 『想い出の守護者』 : スフォルツァンドの残響よ
今、この手に

[メイン3] 『想い出の守護者』 :  

[メイン3] 『想い出の守護者』 :